【家畜飼育日記】 |
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地球と呼ばれる惑星を通過する際、 我々は人間と呼ばれる生き物を捕獲した。 偉大なる先祖、猫が我々に進化したように、 人間は猿という二足歩行の生き物の進化系のようだ。 だが知識は我々の十分の一すらにも満たない。 我々のような立派な髭もなければ、尻尾すらない、 なんと哀れな生物だろう。 捕獲した人間は酷く怯えているようだ。 観察小屋の中に飼育し、我々は人間をすみずみまで観察した。 まず衣服を剥ぎ、首輪をかけ観察札を付けた。 家畜の分際が生意気にも服など着ていたのである。 裸に剥かれた人間は小屋の隅に隠れてしまったが、 観察を開始するために首輪のリードを引く。 首はどうやら人間の弱点のようだった。 頚部を圧迫された人間は苦しそうに呻き、 涙で泣き濡らした瞳でにらみながら私に従った。 暴れそうになるたびに、電気ショックでおとなしくさせたのが功を奏したか、 人間は私に怯え従属する。 剥いだ服のポケットに、IDカードの用なモノが入っていた。 スキャニングを試すと、簡単に内容を翻訳できた。 どうやら人間が使う言語は我々の使う言語と基本形が一緒らしい。 この人間はどうやら地球軍の中ではそこそこの地位にあるようだった。 地球軍敵性宇宙人偵察隊大佐。 ………、私より上位の階級だ。 腹いせに揺れた尻尾の先が、強く人間に当たると、 人間は怯え身体を丸くして防御していた。 窮鼠のようなその姿に、思わずじゃれつきたい衝動に襲われるが、 じっと我慢する。 「おい、人間よ。私の問いに答えよ」 首輪を強く引き、 人間の揺れる瞳に問いかけた。 人間は震えたままだった。 「人間よ、私の問いに答えよ。答えなくば仕様がない。 直ぐにでも、地球という星を破壊してみせようぞ」 「ぅ・・・・・…」 恐怖で固まる人間。 この人間を捕獲したさいに見た、我らの戦力が恐ろしいのだろう。 文明レベルの違う種族なのだから、当たり前なのだが。 「な、……なにがききたいんだよ!」 人間はやっと言葉を口にした。 舌足らずなのは電気で痺れているせいだろう。 裸体の脚先は細かく痙攣している。 あー、じゃれたい。 噛みたい。 追い詰めたい。 私は再度ぐっと我慢する。 「人間とよばれるお前たちは、何を食して生きるのだ?」 家畜の食料は重要だった。 もしこの人間を我らの愛玩動物として商品化するなら、 そのさいの餌の価格はまず問題になるだろう。 「米とかパンとか肉だ……あと野菜」 「肉はわかる、野菜もわかる、米とはなんだ?」 私の問いに、 人間は答えた。 「稲だ、稲の穂…」 「なんと稲などを食すのか」 それは安上がりだ。 我々は稲など食さない。 思わず膨れ上がる期待に胸が躍った。 「人間よ、つまりお前たちは適度な餌と水さえ与えていれば生命を維持できるのだな?」 問いに頷く人間。 「ふむ、なるほど…。商品価値としては想像以上かもしれんな」 「私が商品だと!」 吠える人間。 机上のそろばんを計算している最中、 邪魔するのはいただけない。 人間がまだ自分の立場が理解できていないようだ。 『ギジジジイィィギジィィ!』 「…っ、あがぁぁぁぁぁぁ!!」 最大級の電気ショックを与えたら簡単に気絶してしまったが、 命には問題ないようだ。 どうやら生命維持機能も優秀なようだ。 今日はひとまず観察を終えて、私は人間の餌の確保をすることにした。 次の日に小屋を覗くと、 人間は顔を泣き濡らしたまま部屋の隅に隠れていた。 部屋に立ち込める異臭。 私は思わず顔をしかめた。 どうやら排尿してしまったようだ。 トイレの事をすっかり忘れていた。 「おい、人間よ。掃除をしろ」 怯えきったままの人間は素直に従った。 人間は痛みによる支配に弱いようだ。 渡した雑巾で汚れをふき取り、すぐに清潔に保たれる。 しかし人間自身は薄汚れたままだった。 「おい人間よ、私の問いに答えよ」 緊張と委縮で俯き気にしていた目がこちらを揺れながら捉える。 「どうしてお前は毛繕いをしないのだ?」 疑問だった。 人間は自らの体が汚れているのに、 自分で毛繕いもしていないのだ。 「人間は毛繕いなどできない…」 「ふむ、ではどうやって身を清めるのだ」 汚いままでは愛玩動物にはなれない、商品価値は落ちてしまう。 「風呂に入ったりする」 「風呂だと!なんと、お前たちはあんな恐ろしいモノに入るのか!」 「あ、あぁ……」 我らの星にとって風呂など言語道断だ。 そんな恐ろしいモノで清めないとならないとなると、商品にはならない。 ………残念だが、殺すか。 私の中に生まれた失望と殺意に、 人間はするどく感づいたようだった。 「ま、まってくれ! 別に風呂に入らなくても濡れたタオルで拭いたり、水浴び程度でもすればいいんだ!」 まくしたてる人間。 必至なのだろう。 「ふむ、ではどれくらい綺麗になるか」 私は小屋に設置されている機能を使うことにした。 パネルを操作し、 壁から幾重の湿った触手を操る。 もとはこの触手、 家畜の豚や牛を奇麗にするための道具だ。 襞を帯びた、粘膜性の触手で家畜の全身を舐めまわし、汚れを落とすのだ。 人間にも適用できるかどうかわからなかったが、試す価値はあるだろう。 「な!なんなんだよ!コレ!」 人間の全身に絡みついていく触手。 慣れない感触に不安なのか、それともこの触手事態に怯えているのか。 人間は暴れた。 「人間よ、命が大事ならば、処分されたくなければ大人しくしていろ。 この触手で身が清められないようなら、お前に商品としての価値はない」 「クソったれ……」 私の本気を感じ取ったのだろう。 人間は悪態を垂れつつも、素直に従った。 触手が人間の肌の上を這った。 「……ぁ………!」 触手独特の触感が人間にはどう伝わるのだろうか。 「あっ……、……っく!」 顔を朱に染め、息を荒く吐き出している。 全身を舐めつくす触手の動きにあわせ、 人間は息を乱して喘いでいた。 私は思わず感嘆の息を漏らす。 「な…なんだよ…やめろ……っって!」 狼狽する人間の表情は、怯えの色。 種族は違えど征服欲をそそられる素晴らしい顔だ。 私は洗浄の意図とは違う趣向をせずにはいられなかった。 「も……やめ!……あぁ……ぐぅ!」 先を湿らせた触手が、人間の性器に深くからみついた。 触手は命令されるがままに、人間の汚れをすみずみまで舐めつくす。 人間の性器は生意気にも勃起していた。 洗浄の行為に興奮している人間は小刻みに揺れ、 震え、痙攣を繰り返す。 人間の筋肉の一筋一筋が、 触手の動きに攣られ浮き上がる。 触手が人間の性器の尿道に深く突き刺さった。 「っがぁぁぁぁ…!!や……ぁ!やめろ!」 言ってしまえば、触手は伸縮自在の粘膜の鞭だ。 いかに狭い尿道といえども、命令に従い奥へ奥へと侵食することができる。 「……ぁぁぁぁ……っ………ぁ」 悲鳴、 というよりは、喉の震えに浅い連続的な呼吸音が乗っているような断続的な声だった。 尿道を凌辱されるのは人間にとってかなりの苦痛になるようだ、 別の触手に身体を舐めまわされ痙攣を繰り返す中、 人間の性器はその中でも一番に震えている。 「あぁ…!んん!…ん……ん…!」 内股をよりいっそう痙攣させた後、 人間は大きく身体を数度躍らせた。 人間の性器から白濁が零れた。 「ん?なんだコレは」 興味をひかれ、 私は触手の端から零れ出ている白濁を掬う。 これは人間が発したものだろう。 だが排尿とはあきらかに違う。 独特なにおいがした。 鼻に吐くにおいだが、それはどこか甘い濃厚なモノに感じ、 口にしてみる。 「これは美味い!おい人間よ!これはなんというモノだ!」 興奮を隠しきれなかった! ただの愛玩動物として商品化しようとしていたのに、 人間は牛のミルクのように濃厚で美味の液体を生産できる事が判明したのだ! これを大発見と言わずに何といよう。 私の問いに人間は答えなかった。 ならばまた同じ事をすれば良いだけだ! 人間が零した白濁を全て掬い飲み干した後、 私は再度触手をフル稼働させた。 「ア…!アアァ…ゥゥゥゥ!……ン!」 全ての触手を使って、人間の白濁を吐き出させるポイントを攻めた。 どうやら性器を中心に、乳首、足先、内腿。 口腔までもが白濁を出させるメカニズムに関係しているようだ。 これは興味深い事だ。 人間が再び白濁を撒き散らした。 白濁を出すと、人間は疲れるのか、 しばらくは勃起を保てないようなのだが、 休ませることなく白濁を絞りだそうと嬲ると、 三度目の白濁が搾りとれた。 人間は痙攣を繰り返し喘ぎ続けた。 「も……やぁぁ……だ……っ!………っぐぅ…んん!」 私は肉球に全体に伝わる汗に気付き、想像以上に興奮している事を自覚した。 白濁の美味はもとより、 人間が触手に蹂躙される様は正直息を飲むほどだ。 人間は愛玩具として申し分ない商品だ。 鑑賞用にしても良い、毎朝白濁を吐き出させるのも良い。 もう少し嬲られる姿を観察したかったが、 触手をオートモードに切り替えた。 本来洗浄が完了すれば自動で止まる触手だが、 どれだけ白濁を生産できるか調べる必要があった。 人間の白濁が止まるまで半永久的に動き続けるようにセットすると、 商品実用化に向けて私は報告書を片手に急ぎ社に向かった。 次の日、 人間は私を恐れ小屋の隅から出てこようとしなかった。 昨日与えてやった最高級の毛布に、怯えるように包まって隠れているようだ。 人間は私をひどく警戒するようになっていた。 私は失敗したと、小さく息を吐いた。 昨夜、商品の実用化の承諾を得た私が鼻歌交じりに帰宅すると、 白濁を出し続けて待っていると思っていた人間は、涙で顔を泣きはらして、震えながら気絶していたのだ。 気絶したままの身体を、触手は休むことなく蹂躙し続けていたらしい。 泡すら吹き出し、揺れる全身をフル稼働で嬲り続ける触手。 嬲られ続けた筋肉が、触手の動きに合わせて反応している。 人間は弱り切っていた。 慌ててスイッチを切ったが、 私が発見した時は衰弱し、痙攣を繰り返していた。 人間は日に何度も白濁を出すことはできないらしいのだ。 しかも人間には我らのような保温機能も整っていないらしく、 身体は冷え切っていた。 急ぎ取り寄せた毛布で身体を包み、痙攣する全身の汗を丁寧に拭き取ってやった。 数時間後、深夜にやっと目をさました人間は、 私を見るなり震えだし泣き出してしまったのだ。 衰弱で満足に動かない身体で必死に這いずり、 恐怖で歯をガタガタかちならし、 小屋の隅まで逃げた。 人間の怯えは想像以上だった。 よっぽど辛かったらしい。 いままでなんとかはっていた虚勢をかなぐり捨て、 人間は泣き怯えている。 見栄もなにも全てが吹き飛んだようだ。 私を、完全に恐怖としての対象に思えてしまうのだろう。 子供のように泣き震える人間に私は困ってしまった。 必要以上に怯えられたら、観察に支障をきたす。 せめて衰弱した身体に栄養をつけさせようと、 私は、本当は自分用にと買ってきたばかりのランクA5のネズミの丸焼きを差し出した。 養鼠場で丁寧に飼育されたこのネズミは、 普段絶対に食卓に上がることのない高級品だ。 今日は人間の商品化を祝いフンパツしたのだが。 「食せ」 毛皮の焦げる香ばしいかおりに、喉を鳴らしつつも、 私は人間に食す用に促す。 だが人間は怯えながらも、首を横に振って拒否した。 「いいから食せ。最高級のネズミだ。私だって普段は食せん」 人間はやはり拒否をした。 どうやらネズミの肉を食べるという文化は人間にはないらしい。 ならばせめてと渡した飲料水を人間はおぼつかない指で受け取った。 震えながらも水を飲み干す。 喘ぎ続けた喉が、よっぽど渇いていたのだろう。 唸りに似た音すらたてていた。 水を飲み干した後、 人間は瞳いっぱいに涙をためて私を睨んでいた。 私の何気ない尻尾の揺れすらも、 いまの人間には恐ろしいのだ。 私はあきらめて観察小屋を出た。 昨夜は放っておいてやることにしたのだ。 監視カメラのモニターで観察していたら、 人間は緊張の糸がとれたのだろうか、 すぐに眠ってしまった。 泣きながら寝ていた。 たまに恐怖が睡眠中にも襲うのか、 弾かれたように飛び起き辺りを見回し震えていた。 私は自分の不用意さを後悔した。 そして今朝、 人間が食せるようにと、何年ぶりだろうか、パンを焼いた。 母が教えてくれた酵母の香りに、上出来だと満足する。 牛のミルクとスープと共にトレイに乗せて、 人間に栄養をつけさせることにした。 昨夜は人間の食べられないものを与えようとしてしまったが、 今朝は違う。 不思議と高まる胸の高鳴り。 私は想像以上に人間という生き物に魅力を感じているようだ。 「おい人間よ、食事だ。こっちへ寄れ」 だが人間は私を警戒したまま小屋の隅から動こうとしなかった。 仕方なく私が近づくと、 ハッ!と緊張の糸を張りつめ別の隅へと這いずって逃げた。 昨夜の蹂躙で脚の筋肉が満足に動かないのか、 這いずる姿は哀れだ。 だが食事を与えず死なれたら困るのだ。 私は逃げる人間を取り押さえた。 「…………ぁ……ぁ……ぅ」 人間の恐怖が、押さえつけている私の腕にまで伝わった。 捕獲された人間は私の腕から逃れようと弱弱しく抗う。 空を切る腕。 暴れる四肢。 「や………ぁ!」 闇雲に動かした腕が私の持つトレイにぶつかった。 『ガシャーーーシャシャーーーン』 と、盛大に音をたて食器が床に落ちる。 割れたコップ。 零れたスープ。 そして、衝撃で崩れたパン。 私は落ち込んだ。 人間が私のパンを喜ぶと思っていたのだ。 黙り込んでしまった私に、 人間は、自分がとんでもない事をしでかしてしまったと思ったのだろう。 嗚咽をあげて泣き出した。 私はやり切れない思いで小屋を出た。 人間が泣きやむことはなかった。 正午過ぎだろうか、 モニター越しに観察をしていた私は思わず声を上げた。 泣きながら寝てしまった人間が床に落ちているパンを食べ始めたのだ。 崩れてしまったパンを小さくちぎりながら、 少しづつだが食べたのだ。 妙な充実感に包まれた。 今夜は何を食べさせようか、 そう考えると一人モニターの前で微笑んでしまうのだった。 続く |
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